Oct. 25, 2014
非経済的動機を導入した経済理論の可能性 ――カント的アプローチ――
Toward an Economic Theory of Moral Motivation: A Kantian Approach
要旨Abstract
本稿では、カント的道徳に則した非経済的動機を考慮した経済モデルを用いて、共有地経済における稀少資源の乱獲消費問題、協同的生産経済における平等主義的分配の労働インセンティブ問題、公共財の自発的供給問題について考察した。第1に、人々がカント道徳的な行動原理に基づいて行動する場合、さらに人々がナッシュ的に行動する社会であってもカント的道徳に基づく社会的エートスを諸個人が共有する場合には、共有地における稀少資源の乱獲消費問題は解決もしくは改善される。第2に、平等主義的分配ルールの下での労働インセンティブの欠如問題についても、カント的行動ないしはカント的道徳に基づく社会的エートスによって、解決もしくは改善される。第3に、人々がカント的道徳に則した社会的エートスを共有する場合、公共財供給のフリーライド問題は改善される一方、経済的インセンティブの導入がこのような道徳的動機を毀損する可能性がある。以上、人々がカント的行動や社会的エートスにみられるような非経済的動機を有する場合には、共有地経済,自発的労働拠出ないしは平等主義等の経済メカニズムによる効率的資源配分の実現が可能となり得る事が示される。
This paper examines the roles of moral motivation in economic resource allocations. It focuses on the two alternative models of moral motivation which get an idea from Kant's categorical imperative, i.e., a model of Kantian behavior and a model of Kantian social ethos. Given such settings, the paper analyzes the tragedy of the commons, the incentive problem of egalitarian distribution in cooperative production, and the free-riding problem in public goods provision. It then concludes that these problems can be improved or even solved due to the existence of Kantian-type of moral motivation in a society.
書誌情報Bibliographic information
Vol. 63, No. 4, 2012 , pp. 346-364
HERMES-IR（一橋大学機関リポジトリ）: https://doi.org/10.15057/25872
JEL Classification Codes: C70, D60, H40
