『経済研究』とは

『経済研究』の刊行趣旨

『経済研究』(The Economic Review)は一橋大学経済研究所が編集する査読学術誌です。従来は紙冊子のみでの発行でしたが、2023年刊行の第74巻からは電子ジャーナル(年2回発行)となり、掲載が決定された著作物は本誌のウェブサイトで直ちに無償で公開されます。

本誌の各号は「投稿論文」、「依頼論文」、「コラム」、「書評」から構成されています。経済学とその関連分野の研究者に和文学術論文を発表する場を提供するとともに、理論と実証を両輪とした質の高い研究を通して現実の経済への理解を深め、過去や現在の政策の効果検証および将来の政策立案を議論する場となることを志しています。

『経済研究』の歴史

『経済研究』は、日本がまだ敗戦後の混乱と貧困の中にあった1950年1月に、査読季刊誌として創刊されました。その後、本誌は72年間にわたり岩波書店から発行されることになります。創刊号の表紙の題字『經濟研究』は当時の職人の手書き(いわゆる「書き文字」)を柘植の木版に起こし、鉛を流し込んで活字を鋳造したもので、他に一つとない本誌のためだけの字体として引き継がれています。

1巻1号 表紙

創刊時の一橋大学経済研究所・所長および本誌編集主任だった都留重人は、その「創刊のことば」において、誌名を『經濟研究』とした理由について、経済学者が「現實の經濟を對象とする態度」を持ち、理論的命題が真であるか否かを現実に照らして「檢證しうる假説をたてる勇敢さ」を失わないことが大切だからだと述べています。その精神は今日まで引き継がれ、本誌は“measurement with theory”および”theory with measurement”の経済学研究の発表の場として、広く投稿論文を求め、国内外の優れた研究者の論文を数多く掲載してきました。

1巻1号 創刊のことば

1959年1月発行の第10巻からは、表紙の題字が旧字体から新字体の『経済研究』に改められました。新字体の題字も引き続き職人の「書き文字」によるものでした。

10巻1号 表紙フォント変更

1997年1月発行の第48巻からは当時の本誌編集主任、鈴村興太郎のもとで表紙デザインが一新されました。その間に活版印刷からオフセット印刷に移行した際にも、「書き文字」の題字の画像が引き継がれ、さらに現在の電子ジャーナルの題字へと継承されています。

48巻1号 表紙デザイン変更

2023年からは、研究成果発表の速報性と読者の利便性の向上を目指し、岩波書店からの紙冊子の発行を中止し、電子ジャーナルに移行することになりました。これを機会に表紙のテーマカラーも一新されました。電子化により、掲載論文・書評等の公開時期は従来に2年間かかっていた状況から、即時公開へと大きく短縮されました。さらに、電子ジャーナルでは、コラムや動画による研究紹介など、研究成果の一般向けの発信にも力を入れています。

74巻1&2号 表紙デザイン変更